サックスも、杖も。身体は「使ったもの」を自分の一部にしていく

身体は、あなたの使い方を覚えている

少し前に『チェイシング・トレーン』という、サックス奏者ジョン・コルトレーンのドキュメンタリーを観ました。

その中で、ずっと心に残っている話があります。

コルトレーンは最初から天才だったわけではありません。

若い頃はマイナーなバンドを渡り歩き、その合間という合間に練習を続けていたそうです。

地方へ巡業に行けば、仕事が終わったあとホテルでひたすら練習。

音がうるさいとクレームが来れば、今度は音を出さずに指だけで1時間。

サックスを手放さず、毎日少しずつ積み重ねる。

そうして、サックスはただの楽器ではなく、自分の身体の一部のようになっていったのでしょう。

この話を聞いて思い出したのが、以前学んだ「体性感覚」の話です。

野球選手にとってのバット。

ゴルファーにとってのクラブ。

テニス選手にとってのラケット。

料理人にとっての包丁。

寿司職人が握りを作るときには、ご飯一粒分の感覚まで感じ取れると言われます。

長年使い込み、感覚を磨いていくことで、道具は身体の延長のように扱えるようになります。

これは特別な才能ではなく、人の身体が持っている素晴らしい能力です。

一方で、この能力は別の方向にも働きます。

例えば杖。

もちろん必要な場面ではとても大切な道具です。

でも、杖に頼る生活が長く続くと、今度は杖なしでは歩きにくい身体へと少しずつ適応していくことがあります。

身体は良くも悪くも、「普段使っているもの」に合わせて変化していくのです。

だからこそ、できるだけ自分の足で立ち、自分の身体を感じ、自分でコントロールする力を育てていくことが、長く元気に過ごすためには大切なのだと思います。

そのためには、運動やトレーニングで様々な刺激を入れること。

バランスの良い食事をとること。

呼吸を整え、自然と良い姿勢を取りやすい身体をつくること。

どれか一つではなく、すべてがつながっています。

身体は、毎日の積み重ねを覚えています。

コルトレーンがサックスを身体の一部にしたように。

私たちも、自分の身体をもっと上手に使えるようになることは、何歳からでもできるのだと感じています

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