
身体は、急に変わるんじゃなくて、少しずつ「分かってくる」
「最近、足元が不安定になってきた」「身体を動かしたいけれど、何から始めればいいのか分からない」「動けるだけでなく、見た目もきれいに整えたい」
そう感じていても、年齢を重ねると、身体はもう変わらないと思ってしまうことがあります。
でも、身体は急に変わるのではなく、動きながら少しずつ「自分の使い方」を思い出していきます。
私はかつて、ボディビルのカテゴリーの一つである「ビキニフィットネス」の競技をしていました。
当時はマシンを使い、「この筋肉を大きくしたい」と決めたら、そこにできるだけ負荷を集めていました。肩のトレーニングでは、三角筋の前・真ん中・後ろを細かく分け、ほかの筋肉をできるだけ使わずに狙っていく。
身体を部分に分け、「狙った筋肉だけ」を効率よく発達させる方法です。競技のためのボディメイクでは、とても合理的でした。
一方、シニアの方の介護予防トレーニングにも携わるようになり、「身体を鍛える」ということを別の角度から考えるようになりました。
シニアのお客様が始める理由は、とてもシンプルです。
「寝たきりになりたくない」
「いつまでも自分の足で歩きたい」
そこでは、ボディメイクはひとまず二の次です。必ずしも重いおもりを使う必要もありません。
片脚で立つ。目線を動かしながらバランスを取る。足裏で床を感じる。身体をひねる。腕を動かす。立ったり、しゃがんだりする。
一見シンプルな動きですが、実際には身体のさまざまな場所から、多くの情報が入ってきます。
足の裏はどこにあるのか。身体はどちらに傾いているのか。頭はどこにあるのか。目線を動かしたとき、身体はどう反応するのか。
そうした情報を受け取りながら、身体は「どうすれば倒れずに動けるか」を調整しています。情報が増えることで、脳の中にある「身体の地図」、いわゆるボディマップも少しずつ変化していきます。
最初は片脚で立つとふらついていた70代、80代のお客様が、続けるうちに安定して立てるようになる。歩くときの足取りも変わってくる。
それは「筋肉がついたから」だけでは説明できません。自分の身体を感じ、どう使えばいいのかが、少しずつ分かってくるのです。
そして、ここで面白い変化があります。
最初は「転ばずに歩きたい」「自分の足で生活したい」と話していたお客様が、身体の機能が向上すると、少しずつ別の願いも持つようになります。
「もう少しお腹を引き締めたい」
「お尻を上げたい」
「背中のラインをきれいにしたい」
最初は二の次だったボディメイクに、興味が出てくるのです。
見た目を変えたいと思うようになると、さらに自分の身体や感覚に目を向けるようになります。どこに力が入っているのか。どこを使うと動きやすいのか。どんな姿勢だと身体が軽いのか。
身体を丁寧に感じながら動くことで、機能だけでなく、見た目にも変化が表れます。ウエストがくびれ、お尻が上がり、背中のラインがきれいになる。
身体の使い方が変わることで、生活の中での動きやパフォーマンスだけでなく、身体のラインも変わっていくのです。
もちろん、ビキニフィットネスのような極端なメリハリをつくるわけではありません。それでも、身体を動かし続けた結果として、自然で、その人らしい美しいラインが生まれてきます。
これは、私自身が競技をしていた頃には、あまり考えていなかったことでした。
あの頃は「見た目を変えるために身体を鍛える」。
今は「身体を使い続けるために身体を鍛える」。
一見、違うアプローチです。でも、どちらにも共通しているのは、身体に必要な刺激を与え、身体を変えていくこと。違うのは、その「目的」です。
ボディメイクでは、狙った筋肉に刺激を集める。
機能向上では、身体全体をつなげ、必要な場所を必要なだけ自然に使えるようにする。
部分を分けて使うことと、身体全体をつなげて使うことは同じではありません。
だからこそ、トレーニングでは「何を使うか」だけでなく、
「何のために、身体に何を学習してもらうのか」
ということが大切なのだと思います。
マシンを使うことも、自重で動くことも、重いものを持つことも、どれが正解というわけではありません。
大切なのは、その運動によって身体が何を感じ、何を学び、それを実際の生活で使えるようになっているかです。
身体は、急に変わるんじゃない。
動いて、感じて、また動く。
その積み重ねの中で、少しずつ自分の身体のことが「分かってくる」。
昨日まで不安だった一歩が、今日は少し安定する。できなかった動きが、いつの間にか自然にできるようになる。
その小さな変化の先に、身体の機能も、見た目の美しさも生まれてきます。
だから、身体づくりに遅すぎるということはありません。
大切なのは、今の自分の身体を知り、できることから動き始めることです。
そして、その先にあるのが、
いつまでも自分の足で歩ける身体と、自然に美しい身体。
私は、そんな身体づくりを目指しています。