モチベーションに頼らなくても、身体は変わる
パーソナルトレーニングでは、よく「モチベーション」という言葉が使われます。
目標を掲げ、気持ちを高め、頑張る。
もちろん、それも一つの方法です。
でも、私がこれまで多くの方の身体を見てきて感じるのは、大きなモチベーションがなくても、着実に結果を出していく人がいるということ。
そういう方に共通しているのは、自分の身体の状態をじっくり観察し、今の自分に必要なことを淡々と続けていることです。
頑張ることより、続けられること。
心を揺さぶられる話を聞いて、よし、頑張ろう!と気持ちが高まる。
その瞬間は素晴らしいと思います。
ただ、気持ちの高まりだけで行動を変えようとすると、気分が落ち着いたときに、行動まで止まってしまうことがあります。
週に一度、何時間もがむしゃらに頑張る。
でも、残りの6日間は何もしない。
それよりも、歯磨きをするように、毎日1分、2分でも自分に必要なことを続けられる人のほうが、身体は着実に変わっていきます。
だから私は、お客様に宿題を出すときも、なるべく負担にならないものを選びます。
ほんの数十秒で終わるものもあれば、1〜2分でできるものもあります。
大切なのは、難しいことをたくさんやることではありません。
その人の身体に必要なことを、日常の中で無理なく続けられること。
そして、伝えたことを実際にやってみることです。
ただ、必要なことが分かっていても、それを一人で続けるのは簡単ではありません。
だから私は、クライアントさんが安心して取り組めるように、その方の生活リズムや身体の状態を見ながら、無理なく実践できる方法を一緒に考えるようにしています。
できなかったことを責めるのではなく、なぜ続けにくかったのかを一緒に振り返る。
できたことは小さなことでも確認し、次の一歩につなげる。
その方にとって無理のないペースを見つけながら、少しずつ「これならできそう」と思えることを増やしていく。
私が関わるのは、トレーニングの時間だけではありません。
クライアントさんが自分の身体を理解し、日常生活の中で安心して行動に移せるようになるまで、その過程を支えることも、私の役割だと思っています。
この小さな積み重ねが、2ヶ月ほど経つと、驚くほど大きな差になって表れることがあります。
腰痛を楽にしたい。そこから始まった身体の変化。
以前、1年間で体重が10kg落ちたお客様がいらっしゃいました。
そもそも、私のスタジオは、ダイエットを主な目的にしているわけではありません。
その方も、最初から「絶対に10kg痩せる」と意気込んでいたわけではなく、体重の増加以上に、坐骨神経痛とつらい腰痛を気にされていました。
まずは、正しい身体の使い方を身につけ、腰の負担を減らすことを目標にトレーニングを開始。
セッションでは、一つひとつの動きを丁寧に確認し、日常生活でも身体を適切に使えるよう練習しました。
同時に、減量の希望もあったため、3日間の食事記録をもとに食習慣を確認。改善できそうな点を整理し、無理なく続けられる食事の工夫をお伝えしました。
さらに、自宅では数十秒から1〜2分でできる簡単な宿題を実践していただきました。
その際も、ただ「やってください」とお伝えするのではなく、実際にできそうか、負担になっていないかを確認しながら進めました。
忙しい日や体調がすぐれない日に、すべて完璧にできなくても問題ありません。
できる日には少し取り組む。
難しい日は、できなかった理由を把握する。
その繰り返しの中で、その方に合った続け方を一緒に見つけていきました。
その結果、まず2ヶ月ほどで腰痛が楽になりました。
痛みが軽減したことで、身体を動かしやすくなり、トレーニングや日常の実践も継続しやすくなりました。
その後も、身体の使い方の練習と食事の見直し、短時間の宿題を続けた結果、1年後には体重が10kg減少。
以前は体重が増えて着られなくなっていたスーツも、再び着られるようになりました。
さらに、トレーニングによって筋肉がつき、身体のラインにも変化が現れました。
一番痩せていた頃と比べると、体重は4kg重い。
それでも、ウエストとヒップのサイズは当時と変わらず、アンダーサイズも同じまま、ブラジャーのカップ数は上がっていました。
つまり、起きた変化は単なる体重減少ではありません。
身体の使い方を整え、食事を見直し、筋肉をつけながら継続したことで、腰痛が楽になり、体重と体型の両方が変わっていったのです。
この方は、特別なことをしたわけではありません。
腰痛を改善するために必要な動きを学び、食事の課題を見直し、日常生活でできることを一つずつ続けた。
そして私は、その一つひとつを安心して実践できるように、身体の変化や生活の状況を確認しながらサポートしました。
その積み重ねが、2ヶ月後の痛みの軽減と、1年後の10kg減量につながりました。
アドバイスを受けることと、行動を変えることは違う。
一方で、何度トレーニングをしても、なかなか結果につながらないケースもあります。
目標は高く、セッション中は熱心に話を聞いてくださる。
でも、日常の行動が変わらない。
例えば、食事記録をもとに、何を、いつ、どのように食べているのかを一緒に振り返り、改善点を具体的にお伝えしても、同じ食習慣が繰り返される。
お菓子を食べる習慣が変わらない。
食事の内容やタイミングを見直す必要があると分かっていても、実際の行動にはつながらない。
そして、しばらく経つと「どうして結果が出ないんだろう」と悩まれる。
ここで大切なのは、自分の行動を客観的に振り返ることです。
目標を持つことと、今の自分の課題を正確に把握することは、別のこと。
自分では頑張っているつもりでも、実際の行動が目標に結びついていなければ、期待する結果は得られません。
耳の痛いアドバイスを受け入れ、自分の弱点や課題に目を向けること。
そして、分かったことを実際の行動に移すこと。
そこまでできて初めて、身体を変えるための一歩になります。
ただし、行動に移せないからといって、すぐに「意志が弱い」と決めつける必要はありません。
宿題の内容が難しすぎるのかもしれない。
取り組むタイミングが生活に合っていないのかもしれない。
身体の痛みや疲れが、行動の妨げになっているのかもしれない。
だからこそ、私はできなかったことだけを見るのではなく、続けにくかった理由も一緒に確認します。
その理由が分かれば、内容をもっと簡単にしたり、取り組むタイミングを変えたり、別の方法を提案したりできます。
クライアントさんが安心して相談できる関係をつくること。
できないことを責められるのではなく、どうすればできるようになるかを一緒に考えられること。
それも、継続のためには大切なことだと思っています。
身体を変えるのは、日々の小さな実践。
パーソナルトレーニングは、セッションの時間だけで身体を変えるものではありません。
セッションで学んだことを、日常生活の中でどう生かすか。
自分の身体の状態を観察し、必要なことを実践し、その結果を振り返り、また次の行動につなげていく。
その繰り返しが、少しずつ身体を変えていきます。
だから、最初から高いモチベーションを持っていなくても大丈夫。
まずは、自分に必要なことを一つ知ること。
そして、それを無理なく続けてみること。
もし途中で難しくなったとしても、一人で抱え込まなくて大丈夫です。
何が負担になっているのかを一緒に整理し、今の自分にできる形へ調整していけばいい。
私は、クライアントさんが自分の身体の変化を感じながら、安心して小さな行動を積み重ねられるように関わっていきたいと思っています。
大きな決意よりも、小さな実践を積み重ねること。
そして、その実践を一人で頑張るのではなく、必要なときに支えてくれる人と一緒に続けること。
私は、そんな身体づくりを大切にしています。